出版不況の「今、漫画業界に入る意味」はあるのか!?ものすごい問題提起だと思います。そして逃げずに正面から答えます!
「調布漫画学校スペシャルトークイベント」
『今、漫画業界に入る意味』
今回、このトークイベントを行うにあたって調布漫画学校の理事長がボクにふったお題がこれです。
『今、漫画業界に入る意味』
恐ろしいタイトルです。
彼女は何気なくつけたタイトルなんでしょうが見たときにボクはびっくりしてしまいました。
のど元に刃をつきつけられた思いがしました。
ボクはこれまでいろんな大学や専門学校で漫画を教える講義をしてきて、今「調布漫画学校」という、漫画の学校をやっているわけですが、そのたびに心のどこかに、教えているこの人たちは今後みんなが漫画家や原作者になってデビューできるわけでも、一生食べていける。とうわけでない。という意識がありました。
ボクが教えてもらった「小池一夫劇画村塾」は一期の塾生二十人中、二三人がデビューするという、そしてその中でもヒットメーカーを何人も出るという高確率の名門中の名門なわけですが、それはまだ漫画業界が豊かであった時代であり、正直、この先、出版不況で漫画業界も先細りになっていく可能性が高い、先行きが見えない今、2015年現在においてですね、皆さんを漫画業界に誘うという事はですね、ひょっとすると「ハメルーンの笛吹き男」のようにみなさんを穴の暗闇の中に誘っているのではないか?という思い。
宮崎駿アニメ「風立ちぬ」の主人公のように、仕舞いには夕焼け空を見ながら「一機も帰ってきませんでしたけどね」と言うんじゃないかと思ってですね。(場内爆笑)
まぁ分かる人には分かるんですが、お前が作った零戦でみんな若者が特攻して死んでいるのに、なんだその言いぐさは!と観客がみな、つっこんだシーンですね。
まぁ、将来、そのような思いに至るのではないかという恐怖と罪悪感にさいなまれてもいたわけです。
この『今、漫画業界に入る意味』
このタイトルはまさしくそんなボクの罪悪感をえぐり、この「調布漫画学校」の存在意義さえ問うています。
オープニングイベントに、その本体の意義を問うとは、なんちゅう事だと。
思ったわけでありますが、さてしかし、それならばその意味を自分なりに問い直してみようと、こう考えたわけです。
なんとなく感じていた不安感や罪悪感と正面から向き合ってみようと思ったのです。
(それでも、これまで、ボクは毎回。漫画の技術、物語の作り方を教えるとともに、受講者さんたちに、漫画の技術以外にも何かのおみやげを持って帰ってもらおうと思っていました。それはまず楽しい。講義に出て、まず楽しんで「おもしろかった」と思って帰ってもらおうと。次に目指すのは、そこで得た事、視点でもって、物語作品を少し深読みして、受講前よりももっと深く楽しめるようになって帰ってもらおう。と。そしてもう一つは、ここで学んだ方法で、作家修業をすることで、明るく生きられるようになったり、鬱から抜け出るきっかけになったり、少し世界が広がってほしい。と思っていました。物語を読み解く、語る。作る、書く。という作業にはそういう効能がある。とボクは信じているんです。それらの事を学んで帰ってもらったら、たとえ受講者さん全員が作家になれなくても、ボクの講義を学んでもらう意義は、あると思っています。)
さりとて、皆さんは現時点で作家を目指していらっしゃるのですから、そういう精神修養的なものを求めてはいらっしゃらないわけで、それはあくまで副産物であるわけです。
でも、そうこうしているうちに、ここ十年、あらゆる紙雑誌がバタバタと無くなり、ますます将来に不安を感じて、漫画業界もうダメかも。と思ってきたのですが、ここ二三年は、ちょっと待てよ。
ひょっとしたら、そう悲観的な要因ばかりでもないかもしれない。と、思い始めるようになりました。
ひょっとして考え方と戦略次第で、希望も、もてるのではないかと。
それをこれから申し上げたいと思います。
さ、問題のこのタイトルです。
図・1
「今、漫画業界に入る意味」
実は、ボクはこれと同じような質問をこれまで、いろんな漫画を教えている先生たちに投げかけてみたんですよ。
ボクは小池先生や先の先輩たちから分けていただいた技術や、それをベースに30年間、自分が磨いてきた物を次の世代に引き継がなくてはならないという義務感を持っています。
でないと、手塚先生初めこの道を開拓し、発展させてこられた先達に死んでから天国で、何をやっていたんだと怒られそうな気がするんです。
ですから是非とも伝える、教えるような事をしていきたいんですけれど、それと同時に、先にのべたような敗戦に若者を焚きつけて送り込んでいるような思いもあるんです。
今、学校で漫画を教えている先生方は、その事については、どういった思いで教えていらっしゃるんですか?と、お尋ねしたんです。
何人もに。
正直、多くの先生が言葉に詰まって答えられなかったり、ご自分の生活のためだから。と正直におっしゃった方もいらっしゃったんですけど、お一人、ボクも、ああなるほどなぁ。という答えをくださった方がいらっしゃいました。
その答えは「鍋島さん、美術学校を出た何割の人間が絵の仕事で食べていると思います?音楽大学を出て何割の人間が音楽で食べていると思います。
文学部を出た人間の何人が小説家になれますか?
しかし絵が描ける。演奏できる。文学が理解できる。と言うことは確実に人生を豊かにします。芸術系の大学とはみんなそんな物です。
技術的に役だったり具体的にお金になったりする理系とは違いますが、文学系学問だって人を豊かに幸せにする立派な学問ですし技術です。学ぶことは無駄な事ではありません」
と、言われました。
確かにそうだと思います。
漫画を描けないよりも、漫画を描ける人生の方がずっと楽しいのは間違いありません。
それは「なぜ、今漫画を学ぶのか」についての、立派な見識だと思います
とても感心いたしました。
その先生の事をボクはとても尊敬いたしております。
ですが、その上で思考をさらに重ね、ボクはボクなりの「今、漫画業界に入る意味」をここで述べたいと思います。
とりあえず、始めましょうか。
図
今日も次々に漫画雑誌が廃刊になる。雑誌も売れなきゃ単行本も売れない。大きな声で言う事じゃないですけどね。事実です。
少年誌が売れない。ワンピースやコナンなど人気ある一部作品は未だに大ヒットしているけど、それを掲載する少年ジャンプや少年サンデーなどの雑誌の部数につながっていない。どんどん落ちている。というこれまでの常識では考えられない状態になっている。
オヤジ雑誌が売れない。数年前間までは、漫画ゴラクなどオヤジ向け雑誌は出版不況において部数を下げてはいたものの、有るところから下げ止まりして、それなりの安定した部数が出ていました。
その理由は、子供の頃に漫画をよく読んだオヤジたちは漫画を読む習慣が定着していて、スマホもタブレットPCも使い方よく分からないし、紙の漫画雑誌に居座るんだなと、言われていたんですが、しかし、最近になってきてこのオヤジ向け雑誌でさえも部数を落としはじめ、名門の「漫画サンデー」や「別冊漫画ゴラク」も休刊になってしまいました。
つまり、これは全世代的に漫画離れが著しくなっているぞ。という風潮になっています。
では、そんな中で果たして「漫画技術を学ぶ意味はあるのか?」「漫画業界に入る意味はあるのか?」
そういう深刻で核心的な疑問が理事長からボクに投げかけられたのです。
しかし、それは漫画業界を目指すすべての人が今、一番、知りたがってる問題でもあるのです。
さて、その事を正面から述べてみましょう。
では。
「今、漫画スキルを学ぶ意味はあるのか?!」
ドラムロール。
答えは「ある!」です。
(会場、どよめき)おおおっ~
てか、ここで無いと言ったら話が終わっちゃうわけで
(会場、爆笑)
力強く言い切ってしまいます!
「ある!」「なぜなら・・・・・・」
「ウェブ社会だから!」
図・3
会場「えええええ???」
と、言えば皆さんは驚かれると思います。
だって今漫画業界がこんなに下火になっているその原因がウェブ社会になったからだと言われているからです。
十年前まで、都会の電車の中は漫画雑誌を読んでいる人ばかりでした。病院の待合室、床屋ではみんな雑誌や漫画や文庫本を読んでいました。
ところが今はそのような人はほとんど見かけなくなり、それらの場所ではみんな携帯電話かスマホをいじっています。
ゲームかSNSをやっているんです。
これは人々の可処分所得と可処分時間が漫画からそれらのウェブコンテンツに移ったということであり、スマホの普及により、漫画はこれら新しいウェブの楽しみ「SNS」や「ゲーム」に駆逐されたのです。
ですからボクが「漫画スキルを学ぶ意味」が「ウェブ社会だから」だと言えば、何か逆説的な事を言っているように感じてしまうでしょうが、そうではありません。
もう一度言います「ウェブ社会だからこそ、漫画スキルを身につける意味があるのです」
さて、それを説明する前に、これまでの漫画業界、漫画をめぐる社会はどのような物だったかと総括したいと思います。
これまで漫画家さんという人々は漫画ピラミッドの頂点でした。
図・4
このピラミッドの底辺。
あえて底辺と言いますが、底辺は漫画家志望者でありました。
まだ持ち込んでいない人のその上に雑誌に持ち込みを続けている志望者がおり、その上に一応、編集部で担当編集者がついている志望者がいます。
これらをひっくるめて「漫画家志望者」という底辺があり、その上に、実力が認められたり、賞を受賞したりして、雑誌に作品が掲載されてめでたくデビューを果たした人々がいます。
ここまでがアマチュア域であり、これから上がプロ域になります。
プロ域というのは雑誌に連載を持っているかどうかです。
連載作家かどうかという違いです。
これまでの雑誌で連載を持てば、掲載のたびに原稿料が支払われ、単行本が出れば印税が支払われて、プロとして漫画で飯が食える。と言うことになるのがこれまでの常でした。
まぁ連載になると制作コストという支出も増えるので収入とのバランスの問題になり、いわゆる連載貧乏になる可能性もありますが、とりあえず食えるようになる。家族を養える。というのが常態だったわけです。
このプロとアマの壁はとても大きく、プロで何年たっても、突然この壁の下側に来る事もあります。漫画家を続けるという事は、実のこの壁をいったりきたりするという事と等しいと思ってください。
さてその連載作家でも人気がなかったり、単行本が売れなかったりして、瀬戸際の難しい立ち位置にいる人もいれば何十年も安定して連載を継続している漫画さんもおり、その連載継続漫画家の中でも、単行本が売れている作家を「売れっ子」作家と位置づけると、この域にたどりつける人はほんの一部なのです。そして、この域は、超大金持ちもあり得ます
それらの人はポルシェに乗ったり、大豪邸に住めたりするわけです。
ちなみに、ボクはかつて頂上に近い域にいて、現在はこのピラミッドの底辺にいます。(笑)
ではこのプロ域にたどりつけなかった人、なったけど滑り落ちてしまってもう一度戻れなかった人はどうなったかというと、当然の事ながら、漫画家への道を諦めて、他の職業につくしかないわけです。
田舎に帰って家業を継ぐか、やたら絵の上手い漁師や、工員、販売員になるか。するわけです。
もしくは夢を諦めきれず、持ち込みを続けて、相手にされないまま。
漫画以外の何もできずに、やがて餓死するとか、自殺するとかね。昔はそういう人が多かったんですよ、本当に。
「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる先生はとても長生きでいらっしゃいますが(当時、ご存命でした。心からご冥福をお祈りします)漫画家の訃報を聞く度に「餓死ですか?」とお聞きになるそうです。
これまでの漫画界の繁栄の足下にはそういう漫画志望者、売れない漫画家の屍が累々と横たわっているわけです。
彼らは、人生を漫画という博打にかけたわけです。
ところがウェブ社会にはこのピラミッドがない!
これはウェブ社会にあまり詳しくないボクから見て、紙の雑誌媒体に比べると、という前置きがありますが、そこのところの実際は後に菊池さんが詳しく教えてくれると思います。
さて、そのボクからすると、ウェブ社会は誰でもデビューはできる。紙雑誌界のようにデビューや連載を勝ち取るためのる階段やピラミッド、椅子取りゲームはなく、ベテランもアマチュアも平坦で越えなければならない壁がない。
かわりに、アクセス数やダウンロード数が命なのであろうと思うわけです。
そこにはクラス、階級と言う意識もないだろうしピラミッドは成り立たない。
図・5
結果として、そこで得られる収入で生活の豊かさの格差はあるでしょうけど、それは漫画家としてのヒエラルキーではない。
やろうと思えば誰でもすぐに参入が可能な社会なのだという事です。
これは、そのまま同人業界に入れ替えても通用する話です。
同様に、これから漫画家さんや志望者が生きていく上で、そっちの可能性もあるわけです。同人活動で収入を得る。という事も他に個人販売という道もあります。つまりはこういう事になります。
図・6
ということで、これまでは雑誌山という山が幾つか、少ししかなかった。
その山の頂点に立つのは容易ではなかった。
それでも少年誌からオヤジ誌まで上る山が幾つもある時代は良かったけれど、今はどんどんその山も数が減っている。
しかし、その代わりに無数のウェブ山ができてきた。
ウェブ山は低い山もあれば高い山もあるけれどとりあえず誰でも登山は可能である。
その他にも、ネットの発達により「キンドル」や「note」のような個人販売山というのも出てきたし、これまであった同人山。といのもウェブの発達で、ネット販売やSNSでの広告活動というのも可能になってきた。
そしてその他、漫画ではないメディアで漫画家志望者や漫画家が生きていくお金をもらえる。という道もできてきたように思えます。
これはいわゆるユーチューバーになって稼ぐとか、ニコニコ動画のニコ主になって、自分の漫画をアップするとか、漫画評論とか色んな事を語ってお金をもらう。というやり方ですね。末はテレビやラジオにコメンテーターなどで出る。という事もあり得ますし、実際にすでに、やくみつるさんとかいしかわじゅん先生とか、内田春菊さんとか、峰なゆかさんですとか、いらっしゃるわけです。
漫画ではなくアニメでも、一人でアニメ作って人気を得た鉄拳さんとか、一人でCGアニメ『ほしのこえ』作ってしまった新海誠さんとかいるわけです。今や、そういう事もできるツールがあるのです。
昔は、雑誌山、だけしかなくて、とりあえずエントリーするのに雑誌編集部に電話をかけて、たまたま受話器を取った編集者が無能であったり意地悪であったり、自分とセンスがあわなかったりすると、それだけで山に登れなかった。道はとざれていた。
中には才能が開かないばかりか、つぶされてしまう事もままあったわけです。
今は、こんなに山があってどの山にもエントリーが可能なわけです。
これはウェブ社会だからこそですよ。
そういう意味では、僕らの時代よりも、今の時代の志望者さんの方が、はるかに恵まれていて、古い時代の僕らは羨ましいと思います。
たとえ、作品の売り上げから入るお金が少なかった。それだけで食っていけないので他に八百屋でもコンビニでも働きながら、ずっとウェブで作品を発信しつづけていけばいいではないか。
そういう新しい兼業作家の道、死ぬまで作家である事のできる道もあるのではないか。
もうそこにはプロとアマの壁など無意味なのではないかと思うわけです。
なので、ボクはこう思うのです。
今や漫画家、作家は「職業」ではなく「生き方」なのではありますまいか。
図・7
そこでその具体的なビジネス例なのですが、この図7のように、幾つか考えらます。
まずは、これまでどおりの雑誌山のヒエラルキーを上り売れっ子になる戦略。
実は、ボクはまだ紙の雑誌も捨てたものではないと思っています。
これからは色々と淘汰されて、利益分配とか経費、人件費とか見直して、変わってウェブと連動したりしながらビジネスプランが変わっていくのではないでしょうか?
以前のような600万部とかいう時代はもう来ないにしても、もっと少部数でも立派に商売として成り立つおもしろい雑誌が出てくるのではないかと、大出版社はまだそのやり方ができていないだけなのではないかと思っています。
その意味では漫画家さんだけではなく、今、出版業、編集者を目指すというのも逆に将来性があるのかもしれません。
次に、ウェブでデビューして、注目を集め、紙媒体へ移行する。もしくは紙の単行本を出す。という戦略。
または、あくまでもウェブ単体で稼ぐ戦略。
同人誌で稼ぐ戦略。
ウェブで売って、同人で売って、出版社に持ち込んでゆくゆくは自分でアニメとか映像とかゲームにも持ち込むという戦略。
一粒で二度三度美味しいという戦略。
主なる生計は他で立てて、ひたすら好きな作品を描いて発表する戦略。
もう、趣味でいいじゃないの。どこが悪いの。って話ですね。
漫画家以外の表現でも稼ぐ戦略。
ユーチューバーとかコメンテーターとか芸人とか、漫画教師とかですね。
さて、ここでこのイベントのタイトルをもう一度、思い出してみましょう。
「今、漫画業界に入る意味」でしたね。
「あります!」「それは今がウェブ社会だからです」というのが、私が出した答えの一つです。
そしてそれをふまえまして、「今、漫画業界に入る意味」
これは「今、漫画スキルを学ぶ意味」でもありますね。
でももう一度、お答えしましょう。
「今、漫画スキルと学ぶ意味はあるのか?」
もう一つ出した答えがコレです。
ドラムロール
「あります!」
「それは漫画スキルが、万能スキルだからです」
図・8
このように、漫画家が二足三足の草鞋を履くことはよくあることで、
ざっと思いつくままにあげただけでも、漫画評論家、漫画原作者、漫画教師、テレビ・ラジオのコメンテーター、俳優、タレント、映画監督、映像の脚本家、イラストレーター、小説家、ニコ生主、ユーチューバー。
と、あらゆる仕事を掛け持ちで、また副業でされている方々はたくさんおります。
もちろんそれぞれの個人の才能や向き不向きは当然ありますが、漫画家はある意味万能選手であると言えるのではないでしょうか。
特にいしかわじゅん先生はぬきんでていますね(笑)五足の草鞋を履いていらっしゃいます。何本足があるんでしょう、みんな小足でしょうけど。
(わかりにくいが漫画にはキャラの足の大きさで大足派と小足派という分類があり、いしかわ先生は小足派の代表と言われていた頃があったのだよ)
すごくマルチな才能を発揮されていて、いしかわじゅん先生が多才でいらっしゃるのは疑いようがないか。
はたして何足も草鞋が履ける原因は、それだけだろうか?
漫画家というのは実は多才でその才能やスキルは、あらゆる分野に汎用性があるのではないか?
メディアからすると使い勝手がいいのではないか?
と思うに至ったのだ。
では、その漫画家の持つ、漫画スキルとは何か?
漫画家を漫画家たらしめているスキルは何なのか、分析してみますと、まずこのようになります。
図・9
- 漫画家さんは絵が描ける。これは漫画家さんにとって絵が描けるのはあたり前の事なので見逃されがちですが、すごい事なのです。
では、ここで絵で説明してみましょう。とか、その時の風景はこんな風です。とか、その人はこんな人です。と絵を描けるといのは、受け手にとって言葉だけよりも何倍も、何十倍も強く伝えることができるのです。
そしてその絵で
②コマが割れる。ということはキャラを動かせるし動画も作れるという事なのです。
③話が作れる。物語が作れるというのも大きな武器です。歴史も政治もビジネスもあらゆる商品もつまるところは物語ですから、物語る事ができる。というのは大きな武器です。
④キャラが作れる。
というのもすごい事なんです。企業とか自治体とか商品とかに今や「キャラクター」は欠かせません。
そんな相手に、いいキャラを作ることができたらそれだけでも大きなビジネススキルです。
⑤テーマを持っている事。
作家ならではの主観、見解を持っているということもコメンテーターやコラムニストにおいても欠かせない条件です。
⑥取材できること。
これは取材できる漫画家さんは、という事ですが漫画家さんの中でも最近は取材が命、すごく取材能力の高い漫画家さんもいますから、こういう人は人には掴めないネタを掴むことができるわけです。
⑦取材したネタをアイディアに変えることができる。
それをどうしたら上手に読者や視聴者に伝える事ができるか、それを考え工夫してアイディアにすることができます。
⑧それをわかりやすく表現できます。
これが、漫画家を漫画家たらしめているスキルです。
そして、ここが大事な所ですが、我が「調布漫画学校」では、この③から⑧までをお教えしております!
という事は!③から⑧を我が「調布漫画学校」で学び、①から②までは自前で努力していただくか、他の漫画の学校に通うか、アシスタントに行くか、していただいて身につける事ができたら、貴方は万能スキルである漫画スキルを身につける事ができる!という事なのです。
この③から⑧までを、ちゃんとメソッドとしてお教えしているのは、世界広しと言えど、調布では「調布漫画学校」だけです。(笑)ので、ぜひとも我が校にいらしてください。
さて、この漫画スキル!マルチスキルであるとともに、実はこれからのメディアの主流にすでになりつつある、ウェブ。漫画の敵と言われたウェブにも実は親和性が高い物なのです。
図・10
ボクは「築地魚河岸三代目」とか「浅草人」のようなグルメ漫画の原作も描いているのでウェブの人たち、特に美味しい物を紹介しているようなサイトをやっている人たちにアドバイスを求められたりするのですが、漫画原作を考える要領で、美味しい料理や素材のストーリーを考えたり、キャラ立てを考えたりすると、とても感心されるんですね。
なるほど、漫画原作者さんというのはそういう風に考えるんですか、ウェブ系のプログラマーさんとかライターさんとかとは違う発想ですね。
確かにわかりやすくて感動して美味しそうです。とその時、ふと思ったんです。これで絵が描けたり写真が撮れたりしたらウェブでもやれるんじゃないか?と。漫画家さんならなお最強じゃん。と、
実際に、田中圭一さんなど「鬱ぬけ」とか「ペンと箸」とか、ウェブルポ漫画を上手にやられていますし、この後に登壇していただく「トキワ荘プロジェクト」から出てきた、仮面トツさんとかもツイッターのつぶやきから火がついてウェブ漫画の第一世代として「オモコロ」というウェブでルポ漫画を連載されています。
こらからはそのようにウェブ記事の描き手として活躍する漫画家さんたちはいっぱい出てくると思います。
しかし、そんな万能選手である漫画家さんにも、問題はあります。
こういう漫画家さんは、どんなに万能漫画スキルを持っていたとしても、ウェブ社会では生き残っていけないのではないかと思います。
図・11
これは漫画家だけでなく社会人としてもすでにダメなのではというご意見もあるでしょうが(会場爆笑)
しかし、おうおうにして漫画家さんや漫画志望者の人たちと言うのは、こういう側面もあるのだよ。
ボクも含めて、漫画作家にしかなりようがなかった。とう人もいっぱいいるのだ。それが作家というものだ。
ボクもほとんどこの条件にひっかかる。
でも、ここにあげたように、完璧にこれらをこなす事のできている漫画家の先生がたもにまたいるのだ。
じゃあ、できない人はどうするのか?という問題だけど、ボクはこうなっていけばいいなぁと思うんだ。
図・12
このような「新しい形の漫画編集者」が出てくるといいなぁ。と思うのだ。
そしてきっと出てくると期待している。
その意味でも編集者や編集志望者も漫画スキルと学ぶ意味はあると思うんだよ。
また、漫画学校などを出て、残念ながら漫画家にはなれなかった人たちも、この「新しい漫画編集者」「漫画プロデューサー」を目指してみるのも、ボクはとても良いことだと思う。
そういう人たちの登場、をこれからの漫画界は、強く求めているね。
そういう面でも、斜陽と言われている出版業界、漫画業界に、あえて今から入っておく意味はあると思うね。
例えば版元に入ったとしても本人が何を目的としてそこで何を身につけるか、そこで何ができるのか次第でいくらでも道は開けるし、出版社のできる事はまだまだあるとボクは思う。
さて、そろそろ、総括だ。
「今、漫画業界に入る意味とは!」「漫画を学ぶ意味とは!」
図・13
では、みんなで、復唱しよう!さぁ!
鍋島校長に一生ついていきます!さぁ!はい!
場内「ぜったい、いやだ!」爆笑。
第二部.
図・14