漫画原作者 鍋島雅治 公式ブログ

「築地魚河岸三代目」「検事鬼島平八郎」「火災調査官 紅蓮次郎」など映画化、ドラマ化作品多数ある漫画原作者 作家のブログです。漫画、映画、日々のことなど語ります。

ヤクザの種類とシノギの関係。

最近、山口組の分裂騒動が世間で取りざたされているけれど。

ヤクザにも、いろんな種類がいて、お祭りの時に店を出したりゲームをやらせる的屋(てきや)香具師(やし)などから発展した神農系。

さらにゲームから発展して博打をやらせる博徒系。

ビジネス(シノギ)はさらにさらに発展し、自ら、興業を打ったり、いわば労働組合などをまとめたり、飲食業からミカジメやおしぼり代、花代をとったり。

土木工事事業を請け負ったり。

これの元が、清水の次郎長。博徒同士の抗争を経て後には山林開墾や清水港の近代化、海運業、英語教育などの事業を興した。

そのきっかけが、榎本武揚ひきいる咸臨丸が清水港で官軍と抗戦し乗組員全員が戦死。その遺体が逆賊として放置されていたのを、独断で回収、弔った。

これを見とがめた官軍に対して「死んでしまえば、みんな仏でございます。」

と、大見得を切ってみせたのが、後の静岡藩大参事、山岡鉄舟に気に入られ、榎本武揚にも感謝された事。は有名である。

有名であるが、最近はヤクザを主人公にしたり美化した物語はなかなかないのでお若い人には名前も知らない。という人もいるかもしれない。

この人がヤクザが大規模な事業を行う走りであり、後に、記事にある山口組もこの例にならう。

三代目、田岡一夫が先代の神戸卸売り市場の運送業、沖仲士たちの組合、口入れ、浪曲興業から始まって、どの事業も、他の事業もどんどん発展させていって、芸能においては、美空ひばり田端義夫などの興業も打つようになった。

現在もその影響下にある有名芸能事務所もある。

さらに多角経営化して、記事の現在にいたる。

他に、服役軍人、不良少年からなる、恐喝ミカジメ、飲食店営業、麻薬拳銃売買を主なるシノギとする愚連隊系もヤクザに加わる。

後に俳優となる安藤組組長、安藤昇が有名で、後にも先もヤクザの組長が引退して人気俳優になったのはこの人くらいじゃないかしらん。

現在の関東連合、ドラゴンなどのハングレもこの部類かもしれない。

さてボクの育った町のとあるヤクザの親分は「金筋」だった。

つまり自らはビジネスをせずに、仲裁、仲介、が仕事。

娘が悪いチンピラに食い物にされていると親から泣きつかれたら、行ってこれを取り返し、世間体と後々を考えて良縁との縁組みまで面倒を見る。

暖簾分けした店員が近くで開店し、本店を脅かすとなるとその間に入って利益配分を取り決める。不良息子が生業につこうとしないと言う相談には、かっさらって無理矢理、手元で行儀見習いをさせて、真人間にし仕事も斡旋する。

と、いう具合。

いつも着流しで十人くらいしか若い衆がいない。

背筋のピンと伸びたおじいちゃんで格好良かった。

彼はヤクザ自身がビジネスをする事を嫌っていた。

なぜなら「しがらみが出来ては公平、平等が保てないから」

子供心になるほど。と思った物だ。

ヤクザの組同士の抗争の仲介人、使者、仲直りの儀式である杯事の司祭(媒酌人?)のような事もやっていた。これは独特の作法のもので、映画「継承杯」の緒方拳の演技に詳しい。この映画ヤクザ物ではなくコメディでけっこう面白い。

興味有る方はどうぞ。

そのおじいちゃん組長は時々、お小遣いをくれたりご飯やお菓子をくれたりもして子供に人気があったし、地域では恐れられずに尊敬され、敬愛されていたのだが、「ヤクザにだけはなっちゃいけない」と子供たちには言っていた。

憧れていたので、どうしてだかは聞いても答えてはくれなかった。

「ヤクザはどんなヤクザも所詮ヤクザ、親不孝だ」としか。

大人になったらその意味は分かった。

種類やシノギは、様々でも、どんなヤクザも、結局は暴力が背景にある。

どのビジネスにしても、他のカタギの事業主よりもうまくいきやすいのは、そのバックに組織暴力があって、組織独自の論理や発展のためなら「殺す事も、死ぬ事も、刑務所に入る事も辞さない」という背景あっての事だからだ。

そして組織の論理は、どんな個人的な権利や主張も許さない。

命令は絶対である。抗争となったら鉄砲玉にならなければならない。

「ヤクザはどんなヤクザも所詮ヤクザ、親不孝だ」

大昔から現在におけるまで、ヤクザは絶えた事はないが、いつの世にもあってはならない存在。なのである。

けしてはびこらせてはいけない。

許してはいけない。

なってはいけない。のだ。